日報を「しゃべるだけ」にしたら、書く時間がゼロになった
豊田の金属加工会社の専務(45・三代目)は、毎晩19時に帰ってきてから日報のチェックをしています。職人たちが書いた日報は、字が薄かったり、途中で終わっていたり、そもそも出てこなかったり。「今日は何をやったか、明日また聞くはめになる」が口ぐせでした。

日報を書く時間が、1人あたり1日20分から、帰りの車で話す3分に変わりました。職人5人分の日報にかかる時間が月28時間から月3時間に減り、使うAIは月2,980円です。
なぜ「しゃべるだけ」で日報になるのか
あなたの会社の職人が日報を書かないのは、さぼっているからではありません。手が汚れている、字を書くのが苦手、パソコンが遅い。理由はいろいろですが、共通しているのは「書く」という作業そのものが負担だということです。だったら書かせなければいい。話した内容をAIが聞き取って、そのまま日報の形に整えて送ってくれる仕組みを使えば、書く作業自体がなくなります。
職人が話すのは、帰りの車の中でも、休憩中の一服の間でもかまいません。「今日はA社の部品を40個作った。途中で刃物を1本替えた。明日は残り20個」と話すだけで、10分後には社長のLINEに日報が届きます。社長も、字を読み解く手間がなくなり、確認する時間が半分以下になりました。書く人と読む人、両方の時間が減るのが大きいところです。
今日からできる手順
0. まず1人だけで試します。いきなり全員に配らず、一番口数の多い職人から始めると、うまくいったやり方が早く見えてきます。
1. 録音するアプリを1つ決めます。電話に入っているボイスメモでも、LINEの音声送信でもかまいません。新しいアプリを覚える必要はありません。
2. 話す内容を3つに固定します。「やった仕事」「使った材料や道具」「明日やること」。この3つだけ話せばいいと決めておくと、迷わず話せます。
- やった仕事(何を、いくつ)
- 使った材料や道具(替えた刃物など)
- 明日やること
3. 録音を送るだけで日報になります。LINEのグループに音声を送ると、AIが文字に起こして日報の形に整えます。月3,000円ほどのサービスで足ります。電波の弱い工場では、家に着いてから送っても構いません。
4. 最初の3日は社長が内容を確認します。言い回しの癖や変換ミスを見て、直す言葉を1つずつ教えます。4日目からはほぼ直す必要がなくなります。
つまずいた話
最初の1週間、工場の中で録音すると機械の音を拾ってしまい、文字起こしがめちゃくちゃになりました。「はよやったろか」まで変な言葉に変換されて、社長が読んでも意味が分かりません。工場の外か、帰りの車の中で話す決まりに変えたら、ほぼ直りました。ベテラン職人の方言も、無理に直さず、話し言葉の癖をそのまま残す設定にしました。すると逆に「誰が書いたか一目で分かる」と社長に好評でした。完璧な文章にしようとしないことが、続けるコツでした。
もう1つ、最初の3日ほどは、恥ずかしがって独り言みたいに小さい声で話す職人がいて、うまく文字になりませんでした。社長が「愚痴でもいいから普通の声で」と声をかけたら直りました。忙しい日ほど言い忘れも増えたので、3つの項目を紙に印刷して車の運転席前に貼ったところ、言い忘れはほぼなくなりました。
数字の根拠
豊田の金属加工会社では、職人5人が日報を書く時間を2週間、時計で実測しました。導入前は1人平均20分、導入60日目は平均3分でした。一番時間が減ったのは60代の職人で、25分から2分になりました。経理のパートさんが集計した記録では、日報にかかっていた残業が月28時間から月3時間に減りました。日報の提出率も、導入前の3か月は65%、導入後の3か月は98%でした。使うサービスは月2,980円で、減った残業代だけで見ても、1か月目で元が取れています。ここに書いた数字は、すべてこの金属加工会社で実際に測った値です。推定を含む数字は使っていません。
職人が5人未満で、そもそも日報を紙のメモ1行で済ませている会社には、費用に見合いません。また、方言や専門用語が強すぎて文字起こしの誤りが多い最初の1〜2週間、社長自身が内容を確認する時間を取れない会社も、うまくいきませんでした。「話すだけでいい」と伝えても、最初の数日は職人が恥ずかしがって話が短くなる会社もあります。