展示会の名刺100枚、お礼メールを1時間で全部出す方法
展示会が終わった週の月曜日、営業担当の机の上に、輪ゴムで束ねた名刺の山があります。全部で100枚。お礼メールを出さなければと思いながら、目の前には溜まった見積もりと納期の調整。名刺の束は、金曜日になっても同じ場所にありました。

展示会でもらった名刺100枚へのお礼メールが、2〜3日がかりから約1時間になりました。1通の文面を考える10分が、AIの下書きを確認する30秒に変わったからです。費用は月3,000円ほどのAI利用料の範囲で、送信前の最後の確認と送信ボタンは必ず人が担当します。
なぜお礼メールは「半分」で止まるのか
小牧の産業機械部品メーカー(従業員30名・営業2名)の話です。この会社は年に2回、展示会に出展します。2日間ブースに立つと、名刺はだいたい100枚たまります。
お礼メールは、相手の会社を調べて、ブースで話した内容を思い出して、失礼のない文面を考えて、1通あたり10分前後かかっていました。100枚なら合計でほぼ17時間。通常の営業の仕事をこなしながらでは、2〜3日がかりです。
しかも展示会の翌週は、留守にしていた分の見積もりや納期調整が山積みです。結果はいつも同じでした。
- 最初の2日は頑張って書く。でも1日20〜30通が限界
- 1週間たつと「今さら送るのも変か」と手が止まる
- 結局、送れていたのは半分程度。残りの名刺は引き出しの中へ
問題は文章力ではありません。10分×100枚という物量です。ここを崩さない限り、根性では解決しません。
今日からできる手順
この会社が今やっている流れは5つです。特別な機械はいりません。スマホと、月3,000円ほどのAIの利用契約だけです。
- 手順1: 展示会の当日、名刺の裏にメモを1行書く。「秋に設備更新、搬送部品の見積り希望」「今回は情報収集のみ」程度で十分です。これが後で文面の芯になります。
- 手順2: 翌朝、名刺をスマホで撮影する。10枚ずつ並べて撮れば10回で終わります。写真をAIに渡し、会社名・部署・役職・名前・メールアドレスを表の形に書き出させます。
- 手順3: 表に会話メモの1行を書き足す。名刺の裏を見ながら写すだけです。ここが一番地味で、一番大事な作業です。
- 手順4: AIに下書きを作らせる。指示はたとえばこうです。「この表の全員に、展示会来場のお礼メールを書いてください。会話メモの内容に必ず触れること。8行以内。売り込みは1行まで。結びは訪問か資料送付の提案」
- 手順5: 1通ずつ人が確認して、人が送る。会社名・名前・役職・メモの内容が合っているかを見て、送信ボタンを押します。1通30秒前後です。
確認30秒×100通で50分。読み取りのやり直しを入れても、100枚で約1時間です。展示会の翌日の朝、始業から昼前までに全部出し終わります。
線引き:最後の確認と送信ボタンは必ず人
この方法には、越えてはいけない線が1本あります。AIに送信までやらせないことです。
名刺の読み取りは便利ですが、間違いはゼロになりません。旧字体の名前、小さな文字の役職、似た形の数字。相手の名前や会社名を間違えたお礼メールは、送らないより悪い結果になります。
- 会社名・名前・役職は、名刺の現物と突き合わせて全数目視する
- 会話メモと文面が合っているか読む(メモと違う話が書かれていたら直す)
- 送信ボタンは人が押す。一括の自動送信は使わない
「確認に30秒もかけるのか」と思うかもしれません。逆です。30秒の確認を残すからこそ、下書きをAIに任せられるのです。
つまずいた話:メモなしの名刺は全部同じ文面になった
最初の展示会では、二つ失敗しています。
一つ目は会話メモです。初日は名刺の裏にメモを書けていたのに、2日目の午後は忙しさで取り忘れました。メモのない名刺について、AIは当たり障りのない同じ挨拶文しか書けません。実際にその文面で送ったところ、後日ある来場者から「ブースで話した内容と違うお話ですね」という返信が来ました。定型文を送ったことが、かえって伝わってしまったのです。それ以来、この会社ではメモのない名刺には差し込み型の短い挨拶だけを送り、深追いしないと決めています。
二つ目は読み取りの誤りです。名刺の「係長」をAIが「課長」と読み違えたまま、確認をすり抜けて送ってしまいました。相手は笑って流してくれましたが、冷や汗ものです。この件の後、役職と名前は名刺の現物と1枚ずつ突き合わせる全数目視をルールにしました。
数字の根拠
この記事の数字は、次のように測ったものです。実測と推定は分けて書きます。
- 従来の1通10分・100枚で2〜3日: 営業2名への聞き取りと、過去の展示会後の送信記録から。実際に送れていたのは半分程度(推定)です。
- 1通30秒・100枚で約1時間: 直近の展示会後、名刺の撮影開始から100通目の送信までの時刻を記録して算出(実測)。
- 費用の月3,000円: 使っているAIの月額利用料(実測)。名刺の撮影はスマホ、送信は今までのメールの仕組みをそのまま使うため追加費用はありません。
返信の件数はまだ集計の途中のため、この記事には載せていません。ただ、浮いた2日は、返信をくれた相手への訪問準備に回っています。お礼メールは売上を直接作りませんが、「送りきれない」をなくすことが次の商談の入口になっています。
次に当てはまる場合は、無理に取り入れないほうがよいです。
- 展示会でもらう名刺が年に数十枚程度の会社。手書きや手作業で十分間に合い、月3,000円の元が取れません。
- 手書きのはがきや一筆添えた封書が武器になっている会社。それはAIで置き換えると強みが消えます。
- ブースで会話メモを1行取る習慣をどうしても作れない会社。メモのない名刺は全部同じ文面になり、かえって印象を下げます。
- 送信前の確認を省きたい会社。名前や役職の誤記はAIでも起きます。全数目視ができないなら、この方法はやめたほうが安全です。