Gitのトリセツ — 図面の「最新どれ?」を終わらせる
朝礼前、経理のパートさんが「見積図面はどれですか」と聞いてきた。パソコンの共有フォルダには「見積図面_最終.dwg」「見積図面_最終_修正2.dwg」「見積図面_最終_修正2_これが本当の最終.dwg」の3つが並んでいる。あなたは、客にどれを渡したか、もう思い出せない。

図面の最新版を探す1回15分の時間が0分になり、月およそ5万円分の時間を、0円の仕組み「Git」だけで浮かせます。
「最終_修正2」がなぜ生まれるのか
原因は簡単だ。あなたの会社の図面は、直すたびに名前を変えて保存している。上書きすると消えるのが怖いからだ。だから「最終」「最終2」「これが本当の最終」と増えていく。誰が最後に直したか、どこを直したか、名前だけでは分からない。人が悪いのではなく、記録を残す仕組みがないだけだ。豊田の金属加工屋では、この名前だけの管理で、古い単価の図面を客に送ってしまい、見積もりをやり直したことがあった。名前で管理する限り、この事故は何度でも起きる。監査で「この図面はいつ誰が直したものか」と聞かれても、名前だけでは答えられない。答えられるのは、記録を機械が自動で残している時だけだ。
今日からできる4つの手順
- 1. 記録の場所を1つ決める図面を入れる共有フォルダを1つに絞る。パソコンの中でもクラウドでもいい。今バラバラに散らばっている図面を、まず1つの場所に集めるところから始める。ここで迷ったら、今一番よく使っているフォルダをそのまま使えばいい。
- 2. 無料の記録道具を1つ入れるGitHub Desktopという、ボタンを押すだけの無料の道具をパソコンに入れる。難しい命令文を打つ必要はない。入れるのにかかる時間は5分ほどで、費用は一切かからない。
- 3. フォルダを「見てもらう」設定にする入れた道具を開き、図面フォルダを選んで登録する。これで、フォルダの中身が変わるたびに自動で記録が残るようになる。難しい設定はここだけで、あとは今まで通り作業するだけでいい。この登録も、慣れれば3分で終わる。
- 4. 直したら一言メモを書いて保存する図面を直し終えたら、「単価を直した」など一言書いて保存ボタンを押す。これだけで、いつ・誰が・何を直したかが全部残る。前の図面に戻したくなったら、記録の一覧からクリックするだけで戻せる。「最終」「修正2」という名前を、もう付ける必要はない。
- 5. 最初は1人か2人だけで試すいきなり全員に使わせようとしない。まずは若手か、パソコンに慣れた1人と試して、困ったところをつぶしてから広げる。この順番を守ると、後で嫌がられにくい。
つまずいた話 - 岡崎の製缶屋の場合
岡崎の製缶屋では、導入した初日にベテランの設計担当が「今まで通りでいい」と一切さわらなかった。理由を聞くと、画面に並ぶ英語の文字が怖かっただけだった。無理に説明書を渡しても、余計に距離を置かれた。そこで、最初の1か月は保存の一言メモを社長が代わりに書き、隣に座って操作を見せることにした。教えるのではなく、隣で一緒にやる。それだけで警戒がゆるんだ。3週目からは自分で一言メモを書けるようになり、1か月後には社長が何も言わなくても使うようになった。焦って一気に説明しないことが、うまくいった一番の理由だった。もし初日に全員へ一斉導入していたら、反発だけが残っていたと社長は振り返っている。
数字の根拠
探す時間の15分は、設計担当5人に1週間、図面を探すたびに時計で測ってもらった実測の平均だ。速い人で5分、遅い人で30分かかっていて、ばらつきが大きかった。ミスの月2件は、客への送付ミスを記録した過去の台帳から数えた実測値。人件費の5万円は、15分×5人×週5日×4週間=月25時間を、時給2,000円で換算した推定であり、実際に浮いた金額そのものではない。給料の高い設計担当が探す時間に使われていた分、と考えてほしい。実際に振り込まれる金額が増えるわけではないが、その時間で別の仕事ができるようになる、という意味の数字だ。
図面を紙でしか扱わない会社や、パソコンの電源を入れるところから毎回つまずく会社には、今はまだ早いです。パソコンで図面を作り、フォルダに保存する習慣がある会社から始めてください。また、図面を直す人が社長1人しかいない会社では、記録を残す効果はあまり出ません。